厚生労働省は、紹介状なしで大きな病院を受診した際に支払う負担額について、現在の5000円から2000円増額し、7000円以上に引き上げをする方向で検討しているようです。
負担額が増えることについて賛否両論、様々な意見が出ているようですが、そもそもなぜ紹介状がない場合に大病院を受診すると、1~3割の窓口負担とは別に、追加で5000円もの追加費用が必要になるのでしょうか?
かかりつけ医は地域に根ざした生活のパートナー
日々の生活において、ちょっとかぜをひいたときや体調に不安があるとき、すぐに診察してもらえる医師がいると心強いものです。
必要なときに受診したり、健康状態を相談できる医師を「かかりつけ医」といいます。
かかりつけ医を決めておくと、さまざまなメリットがあります。まず、大きな病院や大学病院などと違って待ち時間が比較的短く、受診の手続きが簡単です。
また、診察の結果、検査や入院が必要なら適切な医療機関や診療科を紹介してもらえます。
普段から診察してもらっているので、自分を含め家族の病歴や症状、健康状態を把握しており、もしものときにも素早く的確な診断が可能です。
さらに、食生活や健康管理について気軽に相談しやすく、こうした会話から病気の予防や早期発見につながることもあります。
かかりつけ医選びは通いやすく、信頼できる医療機関を探すのがポイントです。
気軽に相談でき、病気や治療法、薬の説明がわかりやすく、必要に応じて専門医を紹介するなどの条件を満たしていれば安心です。
また、かかりつけ医との信頼関係を築くには、患者側も協力することが大切です。
以下の10か条を心がけると、よりよい関係づくりに役立ちます。
医師にかかる10か条
1.伝えたいことはメモして準備 2.対話の始まりはあいさつから 3.よりよい関係づくりにはあなたにも責任が 4.自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報 5.これからの見通しを聞きましょう 6.その後の変化も伝える努力を 7.大事なことはメモをとって確認 8.納得できないときは何度でも質問を 9.治療効果を上げるために、お互いに理解が必要 10.よく相談して治療方法を決めましょう (厚生労働省「患者から医師への質問内容・方法に関する研究」研究班)
かかりつけ医が高度な診療を行う専門病院への橋渡しに
医療機関は、規模や専門性によってそれぞれ担う役割が異なります。
地域の診療所や中小病院は、身近なかかりつけ医として地域医療の窓口となる役目があります。
一方、検査や手術、入院などの設備が整備された総合病院などの大病院では、より重症の患者や救急医療、さらには先進医療などを提供する役割を担っています。
このように医療機関の機能分化が進められているのは、質の高い医療を効率よく人々に提供できるようにするためです。
こうした流れを受け、2015年5月に成立した医療保険制度改革法によって、大病院や大学病院では紹介状なしで受診する患者に対し、特別の料金を徴収することになりました。
初診で5,000円以上(歯科は3,000円以上)の金額を病院側が設定し、患者は診察料とは別に支払う必要があります。
この制度が施行された背景には、初診から大病院を受診する患者が非常に多く、”3時間待ちの3分医療”に象徴される大病院での待ち時間の長さなどに対する患者側の不満や、外来患者数が多すぎて専門的な治療が必要な人に十分な医療を提供できないといった、病院側の課題を改善する目的があります。
患者側としてもいきなり大病院を受診するのではなく、まずはかかりつけ医の診察を受け、詳しい検査や治療が必要な場合には専門病院への橋渡しをしてもらうというように、適切に病院を使い分けることが大切です。
引用元
『日本健康マスター 公式テキスト』NHK出版
192-193頁 ”かかりつけ医の役割”
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